日本全国の地域を学びの場に
ー「さとのば大学様」取材記事ー
「さとのば大学」とは?
さとのば大学は、地域に暮らしながら実践するプロジェクト学習を軸とした新しいスタイルの市民大学です。全国各地の在校生や地域共創領域のトップランナーである講師陣とオンラインで繋がりながら、理論のインプットと対話で学びを最大化していきます。 通信制大学とのダブルスクールなどで、他大学の学士の取得も目指せます。
越境学習、マイプロジェクト、オンラインコミュニティの3つを最大の特徴とし、“わたし”に根ざし、“わたしたち”として、地域から、「ほしい未来」をつくる、未来共創人材を目指す人物像としています。
今回は、日本全国のフィールドをキャンパスとして学ぶ、新しい大学の形を提供している「さとのば大学」の広報を担当していらっしゃる、服部さんのお話を伺いました。
さとのば大学・服部まこさん
東京生活を経て、現在は夫・二人の娘と共に福岡で暮らす。メーカー営業を経て、2015年よりNPO法人にて企業や自治体と協働した環境教育イベント、次世代教育プログラムの企画運営に携わる。さとのば大学の目指す未来の在り方に共感し、2023年からチームメンバーとして参画。学生募集および広報を担当。さとのば大学を通して、日本の素敵な地域とつながりながら、一人一人がより豊かに生きていくための新しい教育の選択肢を創りたいという思いで関わっています。
さとのば大学設立の経緯
Tsuda Outreach(以下・TO):さとのば大学さんの設立経緯を教えてください。
服部さん:発起人の信岡良亮は都会で「いかに成長できるか」「いかに稼ぐ力を身につけるか」ということに向き合う日々を送っていました。その中で「いったいその先に何があるんだろう?」という疑問を持ちはじめ、心身ともに疲弊し、体調を崩してしまい、当時、人口2400人弱の島根県海士町という島に移住したことがきっかけでした。この島では、資源を循環させるサステナブルな取り組みが進められており、その経験を活かして、年と地域の両側から日本全体を良くしたいという想いから、信岡は現在さとのば大学を運営する株式会社アスノオトを創業しました。
服部さん:2021年からは市民大学として、なかなか今までの市民大学にない高校卒業後の受け皿として4年制のプログラムも開講しています。また、通信制の大学と併用してダブルスクールの形で通う学生もいます。アクティブな意味で通信制を選択しながら、限りある時間を有効に使うことができます。様々な活動の範囲を広げていくチャンスになっていると思っています。
TO:通信制を積極的に活用している点がとても魅力的ですね。
さとのば大学が目指す人物像とは
TO:さまざまな環境での学びの機会を提供することで、学生がどのような人物になることを期待されていますか?
服部さん:私たちが目指す人物像は、「未来共創人材」です。正解が1つではないこれからの時代の中で、自分なりの正解を見つけて、社会の作り手になっていくというのが大事だと考えています。横を比較されながら生きていくより、自分ってどんな人で自分が本当にやりたいこと、生きてる中でやりたいこととか、表現したいことって何だろう?っていうことを見つけ出して、それを他の人と一緒に形作っていって欲しいという想いを「未来共創人材」というキーワードに込めています。
TO:「未来共創人材」にはそのような想いが込められているのですね。さとのば大学さんでは、このような人材に育てるために、どのような授業をされているのですか?
服部さん:さとのば大学としては、地域に送り込んでおしまいではなく、生徒が自分の中の心の動きと変化を見つめ、自発的な行動を生み出す練習場としての役割を果たせるように、プログラムを組んでいます。例えば、日本各地に散らばっている生徒たちがオンラインで毎週集い、プロジェクトやその先の未来を作っていくためのソーシャルイノベーションなどの考え方を学べるような授業があります。仲間と一緒に対話型で学び合うことを大切にしています。
TO:初めての地域に一人で飛び込むのは怖い部分もあるので、各地の仲間と繋がることができたら安心できますね。
服部さん:そうですね、仲間として一緒に何をしようかっていうところも大事にしているので、このような活動が広まればいいなと思っています。
地域との関わり
TO:生徒さんが実際に生活する連携地域はどんな基準で選んでいらっしゃるんですか?
服部さん:現在、全国15地域と連携を結んでおり、これらの地域は先進的なまちづくりに取り組んでいるという共通点があります。外から人を受け入れる土壌や、一人一人の挑戦を歓迎する雰囲気があるだけではなく、プロジェクトを企画したいとなった時に伴走してくれる人や、アドバイスを与えられるノウハウを持つ人がいるというのが条件になっています。こういう方たちがいらっしゃるおかげで、すんなり地域に入り込めて、十分なサポートの中で活動できます。
TO:現地の協力者はとても大事ですよね。では、このような充実したサポートの中で、実際に活動した生徒さんたちが経験したエピソードなどがあれば教えてください。
服部さん:朝市に出店してみたり、一緒に障子を張り替えたりなど、楽しそうなエピソードをたくさん聞きます。ジビエが盛んな地域では、地元の小学生にもジビエについて知ってもらいたいと、得意な料理を活かした「子ども向け料理教室」を開催し、みんなで鹿肉バーガーを作ったそうです。その時に参加してくれた「夢は料理人」という小学生と、さらに2回目の料理教室を開催するなど活動が広がっていきました。
夏休みになったら、前にいた地域に里帰りのような感覚で遊びに行く生徒もいます。そうすると街に着いただけで、ふるさとの思い出がもう何十年も詰まってるような感動を覚えるみたいです。地域の方も〇〇が帰ってきた!ととても喜んでくださるそうです。
こういう場所が日本に何ヶ所もできるというのは、生きていく上で、その人を形づくる芯になると思います。
TO:お話を聞くだけで暖かい気持ちになりました。自分のことを覚えて、気にかけてくれている人がいるというのは本当に人生の支えになりますよね。
最後に
TO:では最後に、これを読んでくださる方に伝えたいことはありますか?
服部さん:やはり地域で活動するというのは、ハードルが高いのではと思う人もいるかもしれないですが、そのステップを進めていくサポートになるようなカリキュラムだったりとか、地域の人たちとの関わりをサポートできる用意がさとのば大学にはあります。あとは自分がやりたいって気持ちを出す、第一歩を踏み出す勇気をぜひ持ってもらいたいなと思います。こういった踏み出す経験自体がその人の生き方を変えていくきっかけになると思うので、自分らしい道をみんなが選んでもらえたらいいなと思ってます。
TO:間違いなく、自分の人生にとって大きなステップになりますね!服部さん、本日はありがとうございました!
あとがき
「未来共創人材」というキーワードから、さとのば大学さんのもつ素敵な想いを聞くことができ、自分なりの正解を見つけていきたいと感じました。また、自身も地域創生活動に関わっているため、地域活動の楽しさや新鮮さというものをより多くの方に知ってもらいたいと思いました。
さとのば大学さんの活動一覧
X(旧twitter):https://x.com/info_satonova
文:
戸田花恋(津田塾大学総合政策学部 2年)
Comments