top of page
  • 執筆者の写真Tsuda Outreach

特定非営利活動法人ANiC(アニメ産業イノベーション会議)様


 

アニメ産業のイノベーションを目指して!

アニメ産業をさらに発展させていくために


 

長らく世界で愛されてきた日本のアニメ。そんなアニメ産業も私たちの日常生活同様にデジタル化が進み、転換点を迎えています。

アニメ産業のイノベーションの促進を目指して、オンライン講演会やイベント開催をされている、NPO法人ANiC(アニメ産業イノベーション会議)理事長の松本淳(まつもとあつし)さんにお話を伺いました。



[松本淳(まつもとあつし)さんプロフィール]

ジャーナリストと大学教員として活動を行う。

アニメ産業のイノベーションの促進を目的とし、2019年にANiCを設立。

2019年の京都アニメーション放火事件の際にクラウドファンディングを行い、多くの支援金を全額京都アニメーションへ寄付、話題となった。

現在はYouTube上にて「イノベーターアワード」の配信や、イベントを開催している。



アニメ産業にイノベーションを!


Tsuda Outreach(以下TO):まず最初に、ANiCが設立されたきっかけを教えてください。


松本さん:かねてからアニメ産業のイノベーションを促進したいと思い、取材、研究活動を続けてきました。そう思っていた際、ちょうど関わっていた専門メディアのチームが解散することになり、ノウハウやネットワークを生かして新たな活動をしようと考えました。ただ、会社にするほど利益があがる活動ではないし、一方で同好会のようなものにしてしまうと、外部から見た際に信頼を得ることができないのではないか・・・ということで、検討を重ねて最終的にNPOという形に落ち着きました。


TO:アニメ産業のイノベーションとは具体的にどういうことでしょうか。


松本さん:アニメの制作と流通の両面におけるイノベーションが、今後の産業の発展に欠かせない、ということです。例えば、従来のアニメは紙に鉛筆で一枚一枚描いて、パラパラ漫画と同じ原理で動いているように見せるというのが基本でした。


しかし、ここ10年ほどでデジタル化が急激に進んできて、コンピュータを使って制作する流れが来ています。


同時に、アニメ自体のみならず、ゲームや配信などのアニメを取り囲む環境もデジタル化が進んできています。


具体的には、CG技術の進歩や、VTuberのトラッキング技術(※)の登場などによって、「静止画を連続して再生することで動いているように見せる」というアニメという言葉の定義よりも、現実の方が先を行っている状況になっているのです。

(※トラッキングについてはこちらをご参照ください。)


TO:確かに、アイドル作品のMVなどはフルCGで作られることも多くなりましたよね。VTuberの動きも初期と比べて大分滑らかになりましたし、バグも少なくなったと思います。


松本さん:この流れに乗って、紙と鉛筆を使って手書きで制作を担当する人やCG映像の専門家のみでアニメを制作するのではなく、ゲームを作る人や配信をする人たちなどの、様々な知見を融合させてやっていく必要があると多くの人が考え始めています。


この異業種間の技術の融合が、アニメ産業のイノベーションです。


例えば、アニメとゲームの場合、従来のCGでアニメを作ろうとすると、モデルを作ったり、アニメーションをつけたり、光の調整をしたうえでレンダリングと呼ばれる映像に書き出す作業に一晩かけたりと、ワンシーンを作るだけでもかなりの時間がかかりました。すぐに動きや演出結果を確認してみたくても出来なかったのです。しかし、ゲームエンジンを使えば、自分がつけたい動きをその場ですぐに再現できます。このような技術は、アニメーターからすると、すごく魅力的なんです。


ただ、技術の共有や技術者同士の交流を行う機会はあまりありませんでした。

そのため、NPOとしてまず、異業種の人たちが交流する機会を提供して、さらにそこから出てきた様々な情報をオンラインで皆さんに共有することができたらな、と考えてこの団体を立ち上げました。



規模に見合わない、過酷な現場環境


TO:なるほど。他にも産業の問題点と感じられていることはありますか。


松本さん:よく言われることではありますが、アニメ産業における労働環境です。

アニメを作るにも様々な職種があるわけですが、例えば、アニメをつくるにあたって一番最初の制作進行というお仕事や、絵を1枚1枚描くお仕事の年収はとても低い水準に留まっています。


これについては社会問題的に扱われた時期もありました。なぜなら、アニメ産業の市場規模が世界で2兆円を超える規模になったにもかかわらず、制作現場がまだ十分には潤っていないからです。


この問題に関しては、我々ですぐに解決するには話が大きすぎます。

ただ、先ほど申し上げたような人と人の交流や、技術的な情報の共有のようなことを地道に続けていくことで生産性や利益率が上がって、結果的に現場の皆さんの環境が改善されていくのでは、という期待はあります。


TO:クリエイターさんにお金が行かないというのは大変な問題ですよね。



アニメ産業界で広がるクラウドファンディング


TO:では、今まで活動されてきた中で、印象的だったり、成果が感じられたりしたことはありましたか。


松本さん:京都アニメーション放火事件があった際のクラウドファンディングですね。これは偶然なのですが、このNPOを作ってすぐ後に事件が起こり、私たちも何かできないかとクラウドファンディングを行いました。

(クラウドファンディングの詳細はこちらをご参照ください。)


これについては本当にNPOのメンバー皆で、なんとかしないと!、何かできないか?ということで、必死に頑張ったプロジェクトでした。クラウドファンディングサービスを提供しているMakuakeさんや、多くのアニメのファンの皆さんから非常に大きな支援をいただいて、全額を京都アニメーションさんにお渡しすることができました。

この活動では、クラウドファンディングのようなITの仕組みを用いることで、大きなことができることを私たち自身も実感しましたし、アニメファンの皆さんの力の大きさも強く感じました。


事件の前からアニメファンとクラウドファンディングの親和性の高さは分かっていました。例えば、私が少しだけ関わったものだと『この世界の片隅に』という映画はクラウドファンディングでパイロットフィルム制作などの資金を調達しています。この企画は開始11時間で目標金額を達成しました。


京都アニメーションの事件については様々な募金が呼びかけられましたが、支援の手段を増やす意味でもクラウドファンディングもあるべきなのでは?と考えて、大急ぎで準備をして、お金を集めることができたわけです。結果的に1,000人を超える人たちが支援してくださり、総額で572万7千円にも上りました。


TO:1,000人?!すごいですね


松本さん:リワードといわれる、クラウドファンディングをしてくれた人へのお礼があって、我々はお名前とメッセージを特設サイトに表示するということを行いました。ただそれだけであったにもかかわらず、これだけ集まったということは、恐らくお金以上に、「応援している」というメッセージを届けたい思いが強かったのではないかと思います。その気持ちを表明する機会を用意できたことが、スムーズに支援が集まった理由だったのではないかと考えています。


TO:なるほど。アニメとクラウドファンディングって、確かに最近よく聞く気がしますね。


松本さん:そうですね。ただ、アニメを作る方々は、必ずしもクラウドファンディングなどに詳しいわけではありませんし、それが本業ではありません。今後も、我々のような、アニメ産業の周辺にいる第三者的な立場の人間が、なんらかのお手伝いをできたらと思っています。



つくる以外の関わり方


TO:ありがとうございます。最後に、私も含めた多くのアニメファンは、恐らくコンテンツを生み出す生産側にはならない、或いは、なれないと思っていると思うんです。そのような人たちがアニメ産業のために何かお手伝いできることはありますか。


松本さん:我々のようなNPOの会員になるというのも手段の一つだと思います。

ANiCの場合はハッカソンやオンラインでのトークイベントなどを開催していて、例えばそのハッカソンに参加してみたり、オンラインイベントの企画や運営をする側に回ってみたり、ということが方法として考えられます。

人手不足ですので、手伝ってくれる人がいたら嬉しいな!といつも思っています。


アニメ産業は、私自身も20年以上関わり続けているのですが、常に色々と変化が起きていて面白い産業なんです。ANiCとしても、今後も面白いことに積極的に参加させてもらったり、逆にこちらからきっかけを作るということをやっていったりしたいと思っています。





〜あとがき〜

 私はアニメが大好きです。幼稚園生の頃はアンパンマン、一休さん、しゅごキャラ、最近ではバクテン!!や呪術廻戦やFree!等々…アニメが今の私を形作ったといっても過言ではないかもしれません。

 そんなアニメ業界が近年、CGをはじめとした技術等の発展によって分岐点にあるとのことで、今回ANiC様にお話をお聞きしました。

 アニメ産業の現状や絵の描けない自分なりのアニメ産業への貢献の仕方についてお話をお伺いでき、とても興味深い時間となりました。

 ぜひ皆様にも記事をご一読いただき、アニメや産業に興味を持ち、少しでも参加してみたいと感じていただけたら幸いです。




 



 


             文:望月寧々(津田塾大学総合政策学部2年)














閲覧数:79回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page