フェアトレードが社会を変える
ー前編ー
「助けてあげる」ではない
関わる全ての人が互いに助け合う「相互共助」の精神
近年よく耳にするSDGs(持続可能な開発目標)。そのための活動の一つにフェアトレードがある。
パルシックは、フェアトレードを通して民際協力を行うNGOだ。
東ティモールなどを含めたアジアを中心として活動し、現在は海外ルーツを持つ市民との共生を目指し、東京で子ども食堂も運営している。
そんなパルシックのロバーツ圭子さんに、パルシックの活動内容とフェアトレードの現状や課題について聞いた。
〈ロバーツ圭子さんプロフィール〉
ロバーツ圭子 パルシック専務理事
学生時代にバックパッカーで数か国を回る。イギリスで暮らしていた時、スーパーで見たフェアトレードやオーガニック商品の品揃えや価格が、日本とあまりに違うことに驚き、何とかしたいと考える。
2011年7月震災を機に転職し、パルシックに入職。以来フェアトレード担当として営業、販売管理、商品開発、輸出入を担う。1児の母、東京都小平市在住。
「8対36億から始まるフェアトレード」
8対36億という数字を知っているだろうか。これは世界で最も裕福な8人が、世界人口の半分である36億人分の資産を持っていることを示している数字だ。ロバーツさんはこのような経済格差のある現状への疑問を私たちに投げかけることからご説明を始められた。
「フェアトレードは、社会問題を解決するビジネスの仕組みのことを言います。この仕組みを利用して、価格ではなく信用に基づいた取引をすることで社会を変えていこうという活動です」
「信頼を勝ち取るための規則」
フェアトレードには国際的に二つの認証マークがある。しかし、他国と異なり日本にはフェアトレードに関する法律が存在せず、認証を取っていなくても、各団体が独自の基準を定めてフェアトレード商品として販売することが可能だ。そのため、パルシックではデータを開示するなどし、信頼を得ることを心がけ活動を行っているという。また、WFTOが定める以下の「10の指針」に沿った取引を行なっている。
生産者に仕事の機会を提供する
事業の透明性を保つ
公正な取引を実践する
生産者に公正な対価を支払う
児童労働および強制労働を排除する
差別をせず、男女平等と結社の自由を守る
安全で健康的な労働条件を守る
生産者のキャパシティ・ビルディングを支援する
フェアトレードを推進する
環境に配慮する
パルシックでは特に、現地の人々の能力開発を行いビジネスパートナーとして共に活動することを指す、「キャパシティビルディング」を重視しているという。
「現在は、購入する人が何を買うかを選べるように、生産者が販売先を選べるようになるといいと考えています。私たちは、彼らが良質な商品を生産できるよう、組合運営の手伝いなどを行なっています」
「品質向上とフェアトレードの達成」
東ティモールの貿易の現状(水色が輸入、オレンジ色が輸出)
左側の表は年別で輸入高と輸出高を、右側の表は年別の輸出高の内訳を表したもの
以上の表は東ティモールの貿易の現状である。表からは、輸入高が輸出高の20倍にも及び、さらに輸出高の9 割以上をコーヒーが占めていることが読み取れる。しかし、世界全体からみた生産量としては非常に少ない。
「東ティモールにとってコーヒー生産が非常に重要である一方で、世界のコーヒー流通の農地別内訳を見ると、東ティモールのコーヒーが占めているのはたったの0.3%で、アジアのコーヒーの中でも1%と少ないんです」
生産量が少なければ、品質で勝負するしかない。そこで、パルシックはコーヒー生産者の組合を設立し、品質向上のための努力をしている。
「フェアトレードではできるだけ現地で加工まで行うのが理想的です。
ただしコーヒーに関しては、品質上焙煎したてのものをお届けするのが重要であるため、焙煎とパッキングをすることができません。そこで品質維持のために、それらは日本国内で行っています」
パルシックの介入前は、生産者自ら仲買人や大手企業などに販売していたという。しかし品質よりも量が意識されていた上、価格交渉をしていなかったため、十分な収入を得ることができていなかった。
このようにトレーサビリティのシステムが完成し、徐々にフェアトレードが達成されていったのだ。
「収入の多角化を実現」
フェアトレードの活動を継続していても、コーヒーに収入を頼る生活は変わっていない。そこで、パルシックはコーヒー生産以外の収入源を確保する支援も行っている。
そのうちの一つが女性のネットワークの確立だ。現地のコーヒー生産は男性が基本であり、女性が直接収入を手にする機会が少ないため、女性が商品の作り方を学ぶ機会を設けたという。そして現在では、パッケージを「アロマティモール」という名前に統一し、ブランド化して販売している。
このように収入の多角化を図ることによって、現地の生活水準の改善と女性の権利向上への貢献も期待できるのだ。
後編に続く・・・
〜NPO法人パルシックさんからのメッセージ〜
こんにちは!Tsuda Outreachの皆さん、今回は取材に加えて、チャリティイベントでパルシックの商品をご販売もありがとうございました。フェアトレードの魅力の1つは、身近なモノを通して、多くの人が参加できるところだと思っているので皆さんの行動力がうれしかったです。パルシックはフェアトレードを含み、社会を変えていくための色々なアプローチをしています。現在は、「東ティモールの子どもたちに栄養たっぷりな給食を届けたい!」(2022年8月末まで)クラウドファンディングに挑戦中です。ぜひ、以下のリンクをご覧ください。https://readyfor.jp/projects/parcictimorleste
〜あとがき〜
今回の取材を通して、農業で生きる生産者の方の厳しい現状と共に、フェアトレードに関して自分がどれだけ無知であるかを知りました。私のようにフェアトレードに関する知識がない人は、おそらく少なくないでしょう。しかし、知識を身に付け、スーパーやコンビニにも販売しているフェアトレード商品を購入することは、広くSDGsが謳われる今、最も身近な課題解決方法の一つではないでしょうか。
<パルシックさんの活動一覧>
【クラウドファンディング挑戦中】
東ティモールの子どもたちに栄養たっぷりな給食を届けたい!
パルシックHP:https://www.parcic.org
フェアトレードショップ『パルマルシェ』:https://parmarche.com/
パルシック Instagram:https://instagram.com/parcic_tokyo
パルシックTwitter:https://twitter.com/parcic_office
フェアトレード部Twitter:https://twitter.com/parcic_ft
パルシックFacebook:https://ja-jp.facebook.com/parcic
パルシックYouTube:https://www.youtube.com/user/ParcicVideos
文:大澤 陽(津田塾大学総合政策学部1年)
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