“フリー”だからこそ教育に対して出来ること
学校が抱える課題とは?
フリー問題集とフリースクール
ー学校が抱えている課題とはなんでしょう?
フリースクールが出来ることはなんでしょう?
教師を経験したことがあるからこそ見えてきた教育現場の課題解決に取り組むNPO法人紡希の杜は、全国の教師と子どものためにフリースクール運営、フリー問題集の作成を行っています。今回は、代表理事の斎藤昴さんに取材をさせていただきました。
この記事が、教育で悩む方の一助につながれば幸いです。
<斎藤昴さんプロフィール>
埼玉大学教育学部理科教育講座卒業。理科教育と英語教育を学び、日本をはじめ、モンゴルやパキスタンで「目に見えないものを見る感動」をテーマに実験教室を行う。また、大学時代より塾講師や学校ボランティアに参加することを通して、子どもへの教育に携わる。大学卒業後は、日本全国に展開する通信制の高校で教鞭をとり、子どもたちの様々なニーズに触れ、そのニーズに応えたいという思いを抱き、NPO法人紡希の杜や、学校の先生方をサポートするための企業も立ち上げる。
「紡希の杜のイロハ」
Tsuda Outreach (以下・TO):まず最初に、紡希の杜を立ち上げようと思ったきっかけや理由を教えてください。
斎藤さん:はい。主として、子どもの未来を信じて希望を紡いでいくお手伝いをする活動をしています。実は僕は元々教員を目指していて、学校の教員になろうとしていました。ところが、大学で教育実習を経験したり、私立高校で働いたりしてきた中で見えてきた課題があったんです。それは、多忙ゆえのギスギスした雰囲気の職員室、そして学校に行けない子どもの存在でした。そのような子どもが自分が小・中・高生だった頃よりもいて、実際に教えた子が毎日通うことができなくなったこともあったりして、課題を感じました。それでまずはフリースクールをやってみようと考えたんです。また、そこから全国の教育や教育格差をなくす取り組みもしていきたいと考えています。
「実際の教育現場で見えた課題」
TO:現在はどこで活動をされていますか?
斎藤さん:別の会社ですが、埼玉県戸田市で活動していました。公立中学校6校で、市が費用を負担する完全無料の授業です。塾に通えない子たちが参加するので、先生と生徒、両者にとって良い形なんです。
TO:このように実際に学校に行って教えているのは小中高校全部ですか?
斎藤さん:今は、中学校のみです。小学校でもやっていたのですが、人手不足で…
TO:人手不足の問題を解消すべく、何か他に取り組んでいることはありますか?
斎藤さん:今後、フリー問題集『みらはぐ』を作っていこうという話があります。
フリー問題集には大きく分けて3つの良い点があります。
1つ目は、教育格差の解消に繋がることです。貧困による学習機会の損失の解消になります。2つ目は、学習することの出来ない子どもに学習意欲を高めてもらうことです。塾講師の解説付きの問題集ですので、塾に通えない子にも授業を届けることができます。最後に、先生たちの負担軽減です。学校の先生方の忙しさによって働きがいが苦しみに変わってしまう問題の一助になっていくことを願っています。
TO:なるほど、先生が教えることには限界があるので、そこを問題集の提供で補っていこうという形ですね!フリー問題集はどのようなものですか?
斎藤さん:学校で習う内容が基本となっています。中学1年生から中学3年生まで、入試問題も含めて掲載することで復習から受験まで使えるんです。
TO:すごいですね。
斎藤さん:紙媒体で配った教材をそのまま解説することで、塾に行かなくても、その冊子だけで、学習が完結します。塾には対面の良さがあるけれど、この教材は学校の授業についていけなくなってしまった子、逆に学習意欲があるけれど経済的に塾には通えない子などに使ってもらいたいです。
斎藤さん(左)と芳賀さん(右、フリースクールデジタルラボ教室長)
「不登校の子どもたちとフリースクール」
TO:不登校の子どもへの支援についてお聞きしたいです。
斎藤さん:今私たちがいるこの場所は、塾のスペースを借りて運営しています。塾を運営している方に理解していただきながら、本当におんぶに抱っこの状態になってしまいますが、やっています。
TO:こちらのフリースクールでは子どもたちにどのような取り組みをしてもらっていますか?
斎藤さん:基本的に、不登校には様々な背景があります。今一番多いのは、無気力と学習意欲が湧かないところにあって、学校に行くよりも家にいる方が楽しいこと、面白いことがたくさんあって学校に行かなくなってしまう子が多い。結果として学習に遅れが生じ、学習意欲を失ってしまうのです。そこで、その子たちに外へ出てきてもらって、生活習慣の改善をしながら、人との交流を通じて、学ぶ楽しさをわかってもらう。そして学校に行っても良いかなと思ってもらえるような形でサポートしています。
TO:そうなんですね、楽しさを経験してもらうとおっしゃいましたが、具体的にはどのようなことをしているのですか?
斎藤さん:コンテンツの一つとして、eスポーツをやっています。
TO:eスポーツってゲームですよね。あえてゲームにする理由は何ですか?
斎藤さん:ゲーミフィケーションという言葉はご存知ですか?ゲームを通じてコミュニケーションを取るという意味です。扱うゲームはチーム戦のものなので、サッカーなどのスポーツに近く、声を掛け合いながら進めていきます。そうすると、自然とチームワークができたり、PDCAサイクル(Plan、Do、Check、Act)の練習になったりします。計画して、実際にやってみて、反省して次に繋げる、というサイクルは何においても大事な考え方なので、学んでもらいたいと思っています。
TO:ゲームから学べることは多くあるのですね!
斎藤さん:そうなんです。このeスポーツのようにチームで対戦するようなものでは、小学生がプレイするとどうしても喧嘩や言い合いになることが多くなってしまうのですが、むしろそのような経験を通して、メンタルのコントロールを学んでいけると考えています。
TO:なるほど。
斎藤さん:はい、まずはeスポーツを用いて子どもたち同士で楽しんでもらい、ゲームで培ったコミュニケーション力やアンガーマネージメント力を使って勉強に繋げていってほしいと思っています。
TO:お話いただきありがとうございました!
eスポーツを通したアイスブレイクの様子
〜あとがき〜
取材の後、フリースクールに導入するのに最適なゲームを選ぶお手伝いをさせていただきました。ゲームによって磨かれるであろうスキルを考え、5段階で評価させていただきました。Tsuda Outreachのメンバーは普段ゲームをしないメンバーばかりでしたが、とても楽しく、オンライン活動が多いために中々縮まらない心の距離が、ゲームを通して近くなったように思えました。
eスポーツを体験している様子
紡希の杜さんの取材で、初めてゲームフィケーションという言葉を知りました。初めは強く惹かれるものではありませんでしたが、取材後のお手伝いでゲーミフィケーションを経験し、ボードゲームやアイスブレイクで使われるようなゲームよりも、思考力や個性を生かすことができるため、仲が深まるだけでなく、個人を深く知ることができる素晴らしいものだと感じました。
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<紡希の杜さんの活動一覧>
紡希の杜Facebook: https://www.facebook.com/tsumikinomori.NPO/
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文:冨永 友惟(津田塾大学総合政策学部2年)
榊原 千尋(津田塾大学総合政策学部1年)
岡本 萌花(津田塾大学総合政策学部1年)
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