動物と人間が共存できる社会のために
犬の殺処分ゼロ・人間との共生を目指して
シンボルの夢之丞
(提供:ピースワンコ・ジャパン様)
広島県で犬の殺処分ゼロを実現させ、その動きを全国に広げようと活動されているピースワンコ・ジャパンさん。国内外のピースウィンズ・ジャパンさんが運営しています。犬の保護、譲渡、救助犬やセラピードッグの訓練などを行い、全国にある犬の施設を運営しています。今回は広報の青井様にお話を伺いました。
〈青井玲奈様プロフィール〉
学生時代に政策学部で動物福祉を研究していた。現在は広報として支援者の方々に活動内容を届け、活動と支援者の繋がりを深めている。
「保護」「譲渡」「育成」
スタッフと保護犬
(提供:ピースワンコ・ジャパン様)
Tsuda Outreach(以下TO):ピースワンコ・ジャパンの活動内容について教えてください。
青井様(以下青井):保護犬事業で本部を置いている広島県は犬の殺処分が全国でワースト1でした。殺処分になる対象の全体の3分の2ぐらいが野犬で、日本では捕獲され、保健所や介護センターに引き取られます。そして譲渡先が決まらない保護犬は2週間ぐらい経つと殺処分対象になり、日本の制度的に処分せざるを得ないんです。
実は目標の「広島県で2016年に殺処分ゼロ」は達成されていて、実際は全頭引き取りをして、殺処分機の稼働も2016年の日からも全く止めてるんです。今は、他の県にもこれから広げていって、日本全国の殺処分ゼロをなくすために活動しています。また、その活動を通して日本の殺処分ゼロを目指すのとともに、動物と人間が共生できる社会を作るというのが私達のミッションです。
事業としては、殺処分から救う「保護」と、保護犬を家族に迎えられるような「譲渡」活動、そして素養がある子には災害救助犬やセラピー犬などの「育成」をしています。実は団体のアイコンになってる「夢之丞」という犬も災害救助犬として広島豪雨やネパールの地震の際に派遣して、行方不明者を探しました。
TO:そうなんですね。夢之丞はメディアにも取り上げられてますよね。なぜ、救助犬の育成をしようと思ったんですか。
青井:災害救助において、犬の嗅覚はとても役に立つからです。また、この活動の始まりは人道支援からきているということもあります。世界に広がる社会問題は、国や行政や国際機関の届かないところで助けの必要な人や救うべき課題があるので、私達が何でもやっていこうとしています。私たちは「ソーシャルイノベーションのプラットフォームになる」ことをミッションに掲げています。
TO:お話ありがとうございます。では、これからのピースワンコ・ジャパンさんのこれからについて教えてください。
青井:殺処分の犬をゼロにすることは絶対できると思います。そのためには保護犬で多い「野犬」について考える必要があります。
私達が受け入れてる犬はほとんどが野犬なので、人に慣れるトレーニングをするんですね。野犬は人と今まで接したことがないので、近くにいるだけでもびびって後ろに下がったり、全然触れなかったり、怖がって威嚇したりします。でも、愛情を込めて接してあげるとちゃんと人にも心を開いてくれて、野犬でも家族になれるということを、私達も実績として強く感じています。
ですので、これからは、殺処分の問題を知ってくださる方を増やし、一頭でも多く新しい家族と出会って幸せに暮らしてもらい、保護犬を家族に迎えることが当たり前になるような社会にしていきたいです。
TO:そうですね、人間のエゴでペットが犠牲にならないように、人間と犬が共に幸せに暮らしていけるように社会の一員として考えて行動することが大切だと思います。
最期まで幸せに
介護ケア
(提供:ピースワンコ・ジャパン様)
TO:やはり老犬は里親さんが見つかりにくいですか。
青井: そうですね。医療や介護のケアが必要になっても、お薬飲ませるぐらいで済むならまだ里親を見つけられますが、食べるときの角度を調整してあげないといけなかったり、運動するときに息切れしないように抑えたりする必要がある場合、普通の家庭では難しいところもあります。
TO:その場合は、団体で最期まで育てるのですか。
青井:そうです。広島県にオレンジの犬舎というものがあります。点滴がついてたり、2時間に1回尿を出す必要があったり、薬やご飯をシリンジであげる必要のある保護犬の施設です。最後まで幸せに暮らしていけるようにしています。
TO:老犬が増えると施設側の介護の負担が増えてしまうと思いますが、それについてはどう考えていますか。
青井:そうですね。獣医師じゃないと診れない保護犬は難しいと思うのですが、ある程度里親さんにケア方法を教えられる場合、譲渡もします。最近ですと、里親さん自身がご高齢で、最後にワンちゃんと一緒に暮らしたいという方がいらっしゃいました。里親さんのご年齢を考慮して、幼い犬を10数年飼うのではなく、老犬の最期を安らかに看取ってあげたいと言って高齢犬を引き取っていかれました。
青井さんのお話
TO:続いて、青井さんがどういった経緯でこの活動をされているのか伺いたいです。
青井:そうですね。私のルーツは2つあります。
1つ目は、京都で動物相談所やワンちゃんたちのボランティアをしていたことです。NPOやNGOに興味を持ったのは、小学生のときに殺処分のモノクロの写真集を病院で見て、心を大きく動かされたことからです。そのときに私達が普通に生きている中で、人間の勝手で生み出される命や失われる命があると知りました。それで大学はNPOやNGOの活動に関わりたいと思い政策学部に入り、そこで動物福祉を研究しました。
また、2つ目は大学のときに、フィリピンの子供の教育支援をしている団体でインターンです。現地に足を運んだり、日本で学生支部として活動したりしました。何年も同じ町に通い続けていると、次に行ったとき、ドラッグに染まったり、元気だった子供が亡くなったりした人がいました。私が学生だったこともあり、思うように現地の方たちの支えになれないと感じました。例えば、結果的に300人の支援ができたとしても、もしかしたら1000人以上の支援ができたかもしれないし、前に会った子供がいなくなることが変わったかもしれないと考えました。ですが、時間は戻ってこないけれども、これからの未来は変えられるはずだと信じていました。
現在は、広報という立場でファンドレイジングをしています。将来的には、世の中の社会問題をできるだけ早く解決するための仕組みを作ったり、そのための人とお金の流れを作ったりしたいです。
TO:私も幼いころ動物の殺処分の動画を見てショックを受けたものの、自分に出来ることを見つけることができず、無力さを非常に感じたことがあります。
TO:今、青井さんが学生に伝えたいことはありますか。
青井:学生時代は一番何か自分の好きな分野に没頭できる時間だと思うので、やりたいことや好きなことのために勉強してほしいのが一つ。また、日本にいると難民問題など世界的な問題が身近ではないかもしれませんが、私達が普段接しているもの全てが世界と繋がっているので、日常の背景にあることに目を向けてみてほしいです。そして、興味が沸いたら、行動に起こしてほしいと思います。
様々な支援の方法
青井:環境的に飼えないが、別の形で支援をしたいという方にはワンダフルファミリー制度という、チャイルドスポンサーのような支援方法があります。
TO:チャイルドスポンサーの犬バージョンということですか?
青井:その通りです。持病や高齢が理由で、譲渡が難しい子たちを、ワンダフルファミリーに入れています。支援者様が支援したい犬を選ぶことができ、年に数回その犬の写真を添えてメッセージを送ったり、様子をブログに書いて見てもらえるような制度です。このように、直接自宅に引き取るだけではなく遠隔からの支援を通してサポートして頂いているケースもあります。
TO:そんな支援の仕方もあるんですね!お買い物を通しても支援ができるということだったのですが、具体的にどのような方法なのでしょうか。
青井:お買い物で支援する方法は二つあって、一つはAmazonのほしいものリストにある商品を購入して頂くことです。Amazonに私達のセンターごとに登録していて、ハーネスやフードなど普段使ってるものなどを支援者様に買っていただいて、センターに物が届くという支援方法です。この支援にはかなり助けられていてご支援者様にはワンコの写真を送っています。もう一つの支援方法はピースワンコジャパンへの寄付付きのコーヒーを買って頂くことです。オンラインショップで東ティモールのコーヒーを販売しているので、そこから購入して頂く形になっています。
TO:本日はありがとうございました。
~あとがき~
今回の取材では、動物の保護施設の詳しい活動を知ることができ理解がより深まりました。今回のお話から、犬と人間の共存に向けて何ができるのかということについて考えさせられました。また、「時間は戻せなくても未来は変えられる」という青井さんの言葉に感銘を受け、私も社会問題を他人事と捉えることなく解決に向け行動したいと思いました。
ピースワンコ・ジャパンさんの活動一覧
【支援の種類も多種多様!】
里親にはなれないけど支援したい!継続的支援やふるさと納税利用の支援、amazonを使っての支援、オンラインショップでの支援などなど!https://peace-wanko.jp/support.html
文責:三ッ本有希(津田塾大学総合政策学部1年)
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