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執筆者の写真Tsuda Outreach

一般社団法人 GrowAsPeople様


 

スムーズに次へ進められる仕組みを作る

〜夜の仕事からの転職〜

 



性産業は、年を重ねるごとに客がつきにくくなり、体力的な問題で出勤数が減少して稼げなくなってしまうことが殆どです。また、生活が安定してきたり奨学金の返済が完了したりするなど、目的が果たせた際に夜の仕事を辞めようと考える人も少なくありません。そのため、夜の世界には、昼の仕事に転職し新しい生活を送りたいと考えている人が多い傾向にあります。


そのような状況の中、2012年に設立し、性産業に従事している方々が夜の仕事を辞め新しい仕事へ移る際のサポートをし、再出発を後押ししている団体がGrow As People様です。今回は、Grow As People 理事の小泉剛さんにお話を伺いました。




「一般社団法人 Grow As People 」とは?





Tsuda Outreach(以下TO): Grow As People様の主な活動内容について教えてください。


小泉さん:性産業に従事している所謂キャストさんが昼の仕事に移りたい時に、色々な理由で次へ進めない方が多いので、スムーズにセカンドキャリアへ移れるようにお手伝いすることを仕事にしています。

例えば、夜の仕事をしていることを知られたくないため、ハローワークなど公的な窓口に行きにくかったり、相談できる相手がなかなかいなかったりする人が多いので、そこをサポートするという形です。主な活動と並行して、副次的にトラブルなどの相談を受けることもあります。


TO:新しい仕事に移る時はどんな困難が発生することが多いのでしょうか?


小泉さん最初の面接を受ける段階で怖がってしまうことが、自力でセカンドキャリアを探すときに立ち止まってしまう一番の理由ですね。面接で何を聞かれるかわからないとか、履歴書の空白部分をどうすればいいのかなど、そういった部分で足踏みしてしまう人が多いです。

また、もう一つ、昼のお仕事の収入と生活リズムに慣れることができずに、また夜の仕事へ戻ってしまうことがあります。新しい仕事に就くことで苦労するというのと、仕事に就くことが出来ても挫折して戻ってしまう形です。


TO:昼の仕事に移った後も苦労があるのを想像できていなかったため、驚きでした。


小泉さん夜の仕事から昼の仕事に移った後のギャップがすごく大きいんです。夜の仕事は、基本的に個人事業主扱いで、お店には雇われていないんです。要するにシフト提出も自分の自由で、頑張ると日払いで何万円という単位のお金が手に入るので金銭感覚が狂ってしまっている方もいます。

相談者の方に月にどれくらい稼いでいらっしゃるかと聞くと、把握されてない方もいまして、貯金もほとんどなかったりする人もいます。

そういう金銭感覚と生活リズムで暮らしていた人が、7時に起きて23時に寝るという生活リズムを毎日続けていくというのは難しくて、1ヶ月くらいでしんどくなってしまうんですよね。


TO:昼の仕事に就いてからある程度の期間、並走という形でサポートしていくのですか?


小泉さん:いえ、基本的に昼の仕事に就けたら、こちらから連絡を取ることはしません。相談者の方から連絡を頂く場合は、普通にサポートをしますが、無事就けた方へはあまりコンタクトしないようにしています。

Grow As Peopleは、常に活動を公にしているので、うちでお世話になった方は大体の人が夜の仕事をしていた方という風に見られるわけなので、コンタクトを取ってくることは少なくなりますね。

しかし、出戻りで相談に来る方もいらっしゃるし、仲良くしてもらっている方もいます。


TO:相談にいらっしゃる方々の年齢層はどれくらいなんでしょうか


小泉さん基本的には20代後半から30代前半が多いですが、年齢層は幅広いです。20代前半から、一番上だと40代後半の方もいらっしゃいます。

それでも一番多いのは、やはり20代後半から30代前半の、もうそろそろ切り替えないとまずいかなと思い始めている年齢層の方ですね。30代真ん中あたりから40ぐらいになってからだと、体力的な限界がきてセカンドキャリアでも苦労することもあるので、やっぱり移ることを考え始めるのは、このボリューム層の年齢なんじゃないかと思います。



相談者さんへの多岐にわたるサポート



TO:GAPさんは女性中心に支援をされているとホームページに書かれていますが、その理由はなんですか


小泉さん:現在は完全に絞ってはいないのですが、創業時のスタートが女性にターゲットを絞っていたので、自然にその流れになっている感じです。

今は従業員の男性の方、いわゆる黒服の方から相談を受けることもあります。特にアピールはしていないため、大体の人にはキャストさんの支援というふうに思われているので、今後はもう少し男性の方もサポートしていますと謳っていこうとは思っています。


TO:黒服の方はがっつり夜の世界にいるというイメージがあまりなく、キャストさんと比べると夜の世界で働くことで困る機会が少ないように思っていました。


小泉さん:店舗の従業員の方(黒服)もいずれは昼だけの仕事に移りたいなと考えている人もいるにはいます。夜の仕事で稼ぐだけ稼いでから、昼の仕事へすぐ移る方もいます。


TO:社会的ハンディキャップを持つ方が、自身の夜の世界での仕事の様子を発信しているSNSを見たことがあります。実際に、相談者の方が何か障がいを持っていらっしゃる時はどのようにサポートされるんですか?


小泉さん:まず障害者手帳を持っているかをちゃんと聞くようにして、もし持っていない場合はお医者様にいくことをお勧めしています。またGAPのスタッフにキャリアカウンセラーがいるので、キャリアに全く自信がない方はそちらで支援を受けてもらう形を取っています。

ハンディキャップを持つ方をサポートする機関と横の連携を取ってはいるのですが、精神面の障害を持っている方のメンタルへのサポートが少し足りていないと感じる所もありました。

なので、むしろお医者様に診てもらい障害者手帳を取ることをお勧めし、障害年金などのセーフティーネットを受けられるような状態になってから、次に進みましょうというようにゆっくり進めています。


TO:職業紹介もされているとホームページに書かれていましたが、そういう企業さんとはどのように繋がっていくんですか?


小泉さん:現在は3社、職業紹介会社の方と繋がりがありますが、どの会社も先方からご連絡くださいました。


TO:そういった企業さんや相談者の方って、ホームページを見ていらっしゃる方が多いですか?


小泉さん:そうですね。それに加えて、Yahoo!ニュースなどにGAPの記事が上がったこともあったので、その影響も大きいです。また、活動を通して仲良くなる店舗さんもいくつかあり、その店舗の方が相談者を紹介くださることも時々あります。更に、お店の方と仲良くなり、その繋がりで店舗の店長さんとも顔見知りになることはあります。キャストさん同士の横のつながりで、というのはほぼないです。


TO:現在、相談者の数はどれくらいですか?


小泉さん公式LINEでは、並行してだと10人から20人くらいの幅で相談を受けています。LINEだと、ある程度聞きたいことを聞いたら全くコンタクトがなくなるというパターンも多いです。LINEを作る前はホームページから面談に申し込んでもらい、事務所まで来てもらうのがほとんどでした。

できれば、最低でもオンラインでもいいので面談できれば良いのですが、なかなか難しいケースも多いですね。LINEで聞きたいことだけを聞いて、音沙汰なしになる相談者さんも少なくありません。


TO:地方からの相談者もいるんでしょうか?私の経験では、地方の方が夜の仕事への偏見が多いイメージで、そこの辺りも気になります。


小泉さん:います。やはり、キャストさん同士の横の繋がりが気薄なのもあり、且つ、今の自分の仕事を言えないから知り合いに相談するわけにもいかないという方が多いです。一人で抱え込んで悩んでいる方がいる印象ですね。


TO:現在、相談員の方は何名ですか?


小泉さん:現在、僕と夜の仕事の経験者の女性が3名の、4人体制です。フル稼働している一人がキャリアカウンセラーの資格をもっていて、その人を中心にまわしています。


TO:そうなんですね、その方たちは元々GAPさんでお世話になったきっかけで入社した形ですか?


小泉さん:3人中2人がそうです。もう一人は自力で昼の仕事に就いた方で、夜の仕事をしていた知り合いの転職の相談を受けたのをきっかけにGAPを知り、来てくれました。



「Grow As People」のこれから



TO:小泉さんがGAPの活動をしている中で感じる、時代の流れによる相談者の変化などはありますか?


小泉さん:基本変わらないですが、やはり新型コロナウイルスが流行り始めてからは、深刻な相談をされる方が増えたと感じます。しかし、相談内容は大きく変化したわけではないですね。

大まかに分けると、自分で貯金もしっかりしていて昼のシフトなどの準備もできていて、最後に第三者のお墨付きを貰いに来ているような人と、まず貯金をするところからアドバイスが必要な人などに分けられます。なので、時代というよりも人によって大きく相談内容が変化する感じですね。


TO:私が日々を過ごす中で、夜の世界にバイト程度で入っていく友人が結構いたり、SNSなどで色んな有名なキャストさんが自分の生活などを発信するアカウントが増えてきたなというように感じます。

夜の世界が身近になりつつあることに関しては、どのように捉えていらっしゃいますか?


小泉さん:難しい質問ですね。僕個人としては、覚悟はしておいた方がいいけれど、良いのではないかなと思います。

無責任に聞こえてしまうかもしれませんが、軽い気持ちで入ってしまうのは、正直止められない部分だと思うんです。軽い気持ちで入ったけど、天職になる人もいるでしょうし、失敗したと感じ辞めていく人もいるでしょうし、本当に人それぞれだと思うんですね。

だからこそ、一番大事なのは失敗したなと感じて別のことで頑張りたいと思った時に、スムーズに次へ行けることだと思います。

失敗したときに発生する問題というのは、夜の世界のことだけではないと思うんです。誰でも持っている問題なので、失敗をした人や現在とは違う立場で頑張りたい人がスムーズに動けるような仕組み作りが大事だと思っています。


TO:活動をしていく中での達成感はどういったところで得られますか?


小泉さん:相談を受けているとやはり重い内容も多くて、精神的に結構引っ張られてしまうことがあるんです。相談を受けながらGAPの他の仕事もしないといけない時もあるんですが、それに手がつけられないほどに相談内容を引きずってしまうようなこともあります。

しかし、そういう相談をしてくれた方々から感謝の言葉を貰ったり、昼の仕事に就職できた報告を頂いたりすると、とてもうれしいです。中には、昼の仕事に就けた方がクラウドファンディングに寄付してくださったこともあって、それも嬉しく感じました。

これらは達成感とはちょっと違うんですが、こういったことを続けられている理由ですね。僕が相談業務を続けられているのは、達成感よりも責任感のほうが強いです。相談を聞いて、一人で任せても大丈夫だなとなるまで、本当に心から応援するようにしています。


TO:では、最後の質問になります。GAPさんのこれからの展望はありますか?


小泉さん:簡単に受けられる性病検査の仕組みを作るというのを、今進めています。その仕組みができたら、次にシステムの整備と性病の検査と、メンタルケアの相談のパッケージを店舗へアプローチしていきたいなと思っています。

キャストさんを見ている黒服の方も精神的に病んでいる方がいらっしゃり、その悩みやお薬などの相談を受けて、店舗でサポートできるような体制を作っていけたらと思っていますね。


TO:本日は貴重なお話をありがとうございました。





 

<GrowAsPeopleさまの活動一覧>


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                  あとがき


一重にセカンドキャリアへの支援をするだけでなく、親身に悩みを聞き、メンタル面でのサポートもされているというお話を伺うことができ、とても暖かな団体様だと感じました。取材の中で小泉さんが話されていた、「若い時に失敗を恐れずに、有意義な時間を過ごしてほしい。もし悩みがあっても数年後には笑えるようになっています。」という言葉が胸に響きました。








       


         文:榊原千尋 (津田塾大学総合政策学部2年)









        富永友惟(津田塾大学総合政策学部3年)

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