エシカルファッションから目指すフェアな世界
ー前編ー
「暗闇」に閉ざされたファッション業界の裏側を、あえて「見せる」理由とは?
ブランド活動による環境負荷を差し引きで0未満にすることを目標に活動されている原価の見える服屋さん。定番の服のみを、染色なしの”きなり色”のみで販売し、さらにはこだわりの生産工程や原価を全て公開されています。今回は代表の高尾様にお話を伺いました。
〈高尾様プロフィール〉
早稲田大学文学部卒(2015-2019)。学生時代には、早稲田ボランティアセンターのボルネオプロジェクトにて、マレーシアで学校に通えないこどもたちに教育支援を行う。卒業後は企業に就職し、平日は会社員として働きながら「原価の見える服屋さん」の運営を行っている。
きっかけは学生時代の海外経験に
Tsuda Outreach(以下TO):まず活動を始めようと思ったきっかけを教えてください。
高尾さん(以下高尾):直接的なきっかけは、学生の頃に行ったマレーシアでの教育支援ボランティアや東南アジアのバックパックを通して、児童労働や環境問題を目の当たりにしたからです。
ボランティアでは、子ども達が小学校高学年になった途端に、工場や工事現場等に働きに出る現実を目の当たりにしました。。それから、警察に逮捕されてしまった子どもも・・・。 「これは誰のせいなんだろう」と思った時、誰か一人黒幕がいるのではなく、社会構造自体に原因があるのではないか?と。例えば服に関して、私達が低価格で購入するには安く作る必要がありますが、発展途上国の人の給料や、環境配慮に費やすお金が代償になっていることも少なくありません。そうした構造自体を変えられるものがないかなと思い、身近な産業である、ファッション業界に注目しました。
始めは、自分でブランドを立ち上げるつもりはなく、シンプルかつ環境に配慮した服づくりブランドを探していたのですが、当時の自分は見つけることができなかったので、自分の欲しい服とブランドを作ってみようと思い立った次第です。
TO:そうなんですね。あまり関係ないかもしれないのですが、こちらのロゴが気になりました・・!どんな意味があるのでしょうか?
高尾:いきなりダジャレなのですが、エシカルの「シカ」に由来して鹿の角を取り入れました。社会問題と聞くと「自分には関係ない」「説教くさい」と感じてしまう方も多いと思うので、身近に感じていただけるように工夫しました。
ロゴだけでなく、イラストやブランドの名前も全て親しみやすいと感じていただけるようなものにしているんです。
TO: ファストファッションブランドのサイトで生産過程を実際に調べてみたのですが、「環境に優しい雰囲気」は感じられるものの、どこで誰がどのように作っているかまで知ることはできませんでした。今まで自分もこの点は全く気にしていなかったなと気づくことができました。
服を購入するとき、その「見えない部分」を自分から知ろうとする姿勢が大切だと思います。
「ずっと」着られるエシカルアイテム
TO:オンラインでは現在プルオーバーのみ販売されているようですが(取材は3月)、他に販売されているものありますか?
私達は、いわゆる「エッセンシャルライン」と言われるような、流行で1年〜半年で終わってしまうのではなく、ずっと皆が使うような服を作るようにしています。今回のTシャツを含め、これからも基本的にそこにフォーカスして広げていきたいと思っているんです。 TO:肌触りがすごくいいですね。少し厚みもあります。 高尾:肌に当たる部分がパイルになっています。 オーガニックコットン100%で作っているのですが、ある程度厚めに作らないと干しただけではシワが取れないんです。
あとは、エシカルファッション系は、値段が張る割に、すぐ使えなくなってしまうケースも多いんです。出来る限り安くしたいのですが、結局すぐ捨てられてはあまり意味がないので、少し値段が高くても良い生地で作ることにしています。
TO: なるほど、そういう意図があったんですね。確かに、すぐに捨てられてしまってはファストファッションと変わりないですよね。値段が張っても長く使えるかにフォーカスするのは大事なんだと改めて思いました。
オンライン上での販売の他に、実施されていることはありますか。また、活動で一番力を入れていることはどのようなことですか。
高尾:最近では、新宿のマルイで3月1日から7日、その後、みなとみらいで11日と12日にポップアップを出店しました。
基本は同じ内容(商品の販売)でしたが、みなとみらいの方では、服を作るときの端切れを使用したキーホルダーやバックを作る子ども向けのワークショップも開催したんです。こちらは 元々捨てられてしまうはずの生地なので、沢山収益を上げたいというわけではなく、「そのまま捨ててしまうのはもったいない」という思いで実施しました。
商品を購入して頂かなくとも、私達のやりたいこと、活動内容をインタビューやポップアップ、SNSを通してできる限り多くの人に知ってもらうことを優先しています。
「生地の選定」で途上国に光を
TO:MISSION STATEMET AND ROADMAPに生産者の方々の労働環境や製造過程の改善が目標だとありましたが、どのように生産者の方と連携されているのですか。
高尾:私達は、bioRe PROJECTのコットン(bioRe COTTON)を扱うPanoco Trading様というテキスタイル会社を介して生産者の方々と繋がっています。
オーガニックコットンのフェアトレードだけでなく、現地のインフラ整備や農家さんの子どもの教育支援までされているプロジェクトで、活動に非常に共感しています。 TO: そこまでされているのですか?!
高尾: そうです。特にファッション業界は安く沢山作ることが大事なので、コットンもできる限り沢山作って、その代わりに利益がほぼない位で売るのが慣例化してしまっているんです。 フェアトレードのように、適正価格で買い取るシステムがないと、農家さん達は大変厳しい状態になってしまいます。そのため、bioRe PROJECTのように、生産者を包括的に支援できる仕組みは非常に大切です。
TO:生産者の方と繋いでくれる会社を選ぶことで、農家さんの労働環境改善に取り組まれているんですね。
高尾:そうですね。自分達でも農家さんと直接繋がりたいとは思うのですが、まずは私たちが安定して発注してあげられるようにならないと、農家さん達も困ってしまいます。bioRe PROJECTのように既に素晴らしいプロジェクトがあるので、そういったプロジェクトと連携を深めながら、より取り組みの幅を広げていきたいと思います。
TO:どのようなご縁や繋がりを辿ってそちらのプロジェクトと繋がったのですか。
高尾: 生地にはとことんこだわりたかったので、国内外のレポートを読んだりしながら手に入るオーガニックコットン生地をひたすら取り寄せて比べました。
気に入った生地の取り扱いがある生地会社さんには
「原価の公開は可能ですか?」
「生産工程まで公開することはできますか?」
と、条件を確認して 全部承諾してくれるところをひたすら探しましたね。
直接会社にも伺って、様々な種類の生地を直接触ったりしながら、最高の生地を選ぶことができました。
パノコトレーディングさんのご担当者さんはとても対応が丁寧で、いつも生地や生産工程について事細かにご説明いただいています。何よりも自社の商品に自信をお持ちなのが伝わってきます。
後編に続く・・・
~あとがき~
今回の取材では、エシカルな洋服や小物を生産してから販売するまでどのような過程があるのか詳しく知ることができて興味深かったです。また、高尾さんは第二の仕事として「原価の見える服屋さん」を運営されているそうで、学生時代からの自分の夢を叶えるために努力を続けられる行動力と勇気に感動しました。私を含め学生の方々は「新しさ」や「低価格」を求めて、ついファストファッションに走ってしまいがちだと思いますが、暮らしの中に一つはアップサイクルされた洋服や小物を取り入れて行きたいです。
原価の見える服屋さんの活動一覧
【クラウドファンディング挑戦予定!】
素材も、作り方も、配送も、全部がエシカルな半袖スウェットを作りたい! https://mierufukuya.com/pages/spring_tshirt
Instagram:https://www.instagram.com/mierufukuya/
Twitter:https://twitter.com/mierufukuya
中央大学法学部3年 田村三奈
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