top of page
  • 執筆者の写真Tsuda Outreach

原価の見える服屋さん様(後編)


 

エシカルファッションから目指すフェアな世界

ー後編ー


「暗闇」に閉ざされたファッション業界の裏側を、あえて「見せる」理由とは?

 

ブランド活動による環境負荷を差し引きで0未満にすることを目標に活動されている原価の見える服屋さん。定番の服のみを、染色なしの”きなり色”のみで販売し、さらにはこだわりの生産工程や原価を全て公開されています。

前編に引き続き後編では、全てのプロセスをエシカルで一貫させる難しさ、私達が日常生活で気をつけたいこと、そして原価の見える服屋さんが目指すこれからの姿について伺いました。


〈高尾様プロフィール〉

早稲田大学文学部卒(2015-2019)。学生時代には、早稲田ボランティアセンターのボルネオプロジェクトにて、マレーシアで学校に通えないこどもたちに教育支援を行う。卒業後は企業に就職し、平日は会社員として働きながら「原価の見える服屋さん」の運営を行っている。




洋服だけではない、意外な「盲点」

全てのプロセスをエシカルで一貫させている (提供:高尾様)


TO:商品はお客さんから寄付していただいた紙袋で配送しているそうですね。

高尾: はい。最初はエコ素材(再生プラスチックや再生紙)で作ろうと思っていたのですが、結局そうした素材で製作する場合でも結構エネルギーを使ってるというのを知りました。それなら紙袋を再利用した方が資源の無駄がないと思ったのです。


ただ、工場との受け渡しはプラスチックが多いんですよね。


なぜかというと、工場から何百着と一気に送られてくるときに雨に濡れてしまって 全部ダメになったら、困りますから。 なので「紙だけれど水を通さない素材」を今回から導入しようという話をしているところです。



TO:他に素材面とか品質面、生産、販売の面で見えてきた課題があれば教えて頂けますか。

高尾:そうですね、やはり価格がどうしても高くなってしまうことですね。原価率もできる限り上げるようにしているのですが、 エシカル好きの人には耐えられる価格帯ではあるものの、そうではない人にとっては購入しづらいですよね。


それから、デザイン面のクオリティを上げたいなと思っていて。より長く使ってもらうためには、人の体に合わせた微調整など、細かいところまで詰めていく必要があると思っています。私たちはラインナップが少ない一方で、商品を常にアップデートし続けられる強みがありますから、今もデザイナーと相談して改善を目指しています。




回収ボックス利用=「新しい服を買っていい」は誤り?

ハギレで作ったポーチ (提供:高尾様)


TO:若者は服を結構捨ててしまうことが多いと思うのですが、リサイクルショップや店頭のリサイクルボックスにもっていく選択肢もあると思います。ただ安易にそうした選択をするのは危険だそうですね。

高尾:リサイクルボックスに関しては、収集された洋服は発展途上国に送られて、結局向こうで捨てるというケースも多いんですよね。

TO:確かに、電化製品も先進国で出たゴミを途上国へ輸出して結局ゴミの山ができるという話を聞いたことがあります。


高尾:発展途上国が服の処理にかかるコストを負担したり、その処理過程で健康被害が出たりすることもあるようです。 リサイクルボックスに古着を入れているから新しい洋服をさらに買って良い訳ではありません。 実はリサイクルボックスはマーケティング手法として使われているのではないかといった主張も良く見かけるようになりました。リサイクルボックスを置くことで、 罪悪感なく新しい洋服が買えるから売り上げが伸びるのだとか。新品の大半は捨てられてると言われていますが、おそらくそこまで服は必要ないんですよね。 原価の見える服屋さんでは、着られなくなった服をハンドメイド作家さんに送って、リメイクしたものをお返しするサービスも準備しています。



TO:素敵ですね!私の祖母がサイズの合わなくなったセーターの糸を使って新しいサイズのセーターにリメイクしてくれたことがあります。先人の知恵も応用がきくのではないかと思いました。



高尾: 確かに。サステナブルって私なりの定義で言うと「もったいない精神」なのかなと。エシカルというとすごいことをしているように聞こえますが、着られなくなった服をハンドメイドにしたり、余った生地を再利用したりすることは、昔からあるちょっとした生活の工夫ですよね。そうした考え方が広がってほしいです。




「余ったもの」で唯一無二の商品を作りたい

ポップアップでre:aroma様とコラボして販売したアップサイクルサシェ(香り袋) (提供:高尾様)


TO:ドライフラワーやアロマのお店と協業されているそうですが、これからどんな人と、どのように繋がりたいですか。

高尾:「捨てるはずだったものを再活用すること」を一緒にやると意味があるのかなと。ethica labさんはロスフラワーを、 re:aroma さんは創香の際に余った精油をつかって販売されています。「余ったもの」を使って唯一無二の何かを作ることを一緒にできるようなところとコラボしていきたいです。

TO:私達学生にも協力できることはあるでしょうか。



高尾:発信していただくことが1番なのかなって。自分達で言うのと、第三者が言ってくれるのとでは、全く受け取り方が違うんですよね。第三者が発信してくれる「口コミ」的なことは私達としては大きいですし、20代前半の方々の拡散力が大きいので、それ自体が大変ありがたいと思います。


それから、寄付を提案していただくことがあるのですが、やはり一時的にお金を渡されるよりも、継続的にお客さんに購入して頂けることの方が助けになります。正しいことをされている農家さんや工場さんが報われるように、私達はまずビジネス面でしっかりと収入を得て、継続的に農家や工場で働く方々にお仕事をお渡しできるよう取り組んでいきたいです。

TO:本日はありがとうございました。




~あとがき~


 今回の取材では、エシカルな洋服や小物を生産してから販売するまでどのような過程があるのか詳しく知ることができて興味深かったです。また、高尾さんは第二の仕事として「原価の見える服屋さん」を運営されているそうで、学生時代からの自分の夢を叶えるために努力を続けられる行動力と勇気に感動しました。私を含め学生の方々は「新しさ」や「低価格」を求めて、ついファストファッションに走ってしまいがちだと思いますが、暮らしの中に一つはアップサイクルされた洋服や小物を取り入れて行きたいです。


 

原価の見える服屋さんの活動一覧


【クラウドファンディング挑戦予定!】

素材も、作り方も、配送も、全部がエシカルな半袖スウェットを作りたい! https://mierufukuya.com/pages/spring_tshirt





 

文責:田村三奈(中央大学法学部3年)
















閲覧数:74回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page