妊娠してしまったかもしれない・・・
困った時、一人で悩んだ時、
そんな時に、そっと"トナリ"で寄り添える存在に
思いがけない妊娠をした方の相談先として、仙台を拠点に活動されている特定非営利活動法人 キミノトナリ さん。一人で悩んで困っている時に、"トナリ"で寄り添い、本人にとって最善の選択ができるよう、サポートされています。今回は代表理事の東田美香さんにお話を伺いました。
<代表理事 東田美香さん プロフィール>
仙台市生まれ。
上智大学文学部教育学科卒業後、芸能プロダクションにマネージャーとして勤務。
29歳で故郷の仙台に戻り、塾講師などを経た後、東北大学法科大学院修了、東北福祉大学通信教育部社会福祉学科卒業。
法務博士(専門職)、社会福祉士。
「相談先も繋がりもない・・・」
Tsuda Outreach(以下・TO):まず最初に、キミノトナリを立ち上げようと思ったきっかけや理由があれば教えていただきたいです。
東田さん:宮城県に限らず、全国各地で生まれて間もない赤ちゃんが公園などで遺体で見つかるという痛ましい事件が発生しています。一般的に、生んだ人の責任しか問われませんが、報道で知る限り、妊娠して困った時に何箇所かに相談をしたのだけれども、「生まれてから来てください」と言われて、門前払いだったというケースもあります。そういう事件があるという事は、結局助けてくれる場所にアクセス出来ないんだなっていうことが非常によく分かって。そこで、前身の「赤ちゃんポストと子どものいのちを考える会@sendai」を立ち上げ、2019年の4月から1年間、定期的に勉強会を開催し始めました。
TO:なるほど…。勉強会を重ねていく中で、どのような問題が分かったのですか?
東田さん:まず準備段階で、仙台にNPO 同士の横のつながりがあまりないという課題に気がつきました。そこで、第1回目には、多様な職種の方にお声がけし、60名くらいが集まってくださったんですね。基本的に福祉のイベントには、福祉関係者しか来ないことが多いです。だから、これだけ多岐にわたるの職種の人が来るイベントに初めて参加したという意見が多く、嬉しかったです。私自身も開催していく中で、やっぱりこれはいいな、と実感しました。毎回ゲスト講師をお呼びして、いろいろ話を伺っていったのですが、フォーカスするところは、予期せぬ妊娠や、特別養子縁組制度でした。ありがたいことに、これらの問題解決を進めたい!という私の思いに、賛同してくださる仲間が集まって、2020年の6月に特定非営利活動法人キミノトナリとして発足することができました。
「予期しない妊娠そのものを減らすために」
TO:具体的な活動内容を教えていただけますか?
東田さん:にんしんSOS仙台として、思いがけない妊娠をした女性の支援をしています。
妊娠・出産についてのプロである助産師をはじめ、弁護士、社会福祉士、保育士、臨床心理士、キャリアコンサルタントなどの有資格者や、相談支援業務の経験者が直接支援にあたります。また、社会的養護の関係者、主婦、学生など、幅広い分野の人たちで構成されています。
TO:実際に妊娠をしてしまった方への支援の活動以外にも、問題の根幹に様々アプローチされているんですよね?
東田さん:はい、まず現在は、予期せぬ妊娠をした方々への支援を行なっていますが、もう一つの大きな柱は、包括的性教育を進めることです。特に男性への性教育を重視しています。どうしても性教育というと、女の子だけを集めて生理の話をするなどが多いと思うんです。しかし、今世の中に起きている問題、例えば、学校でのいじめや会社でのパワハラやモラハラ、セクハラっていうものも、元をたどると、男性がきちんと性教育や人権教育を受けてこなかったことが原因なんですよね。とにかく、男の子に早いうちから人権教育としての性教育を進めていかない限りは、絶対社会は良くならないという信念を持って活動しています。
「若い世代に届けたい」
TO:現在直面している課題について教えてください。
東田さん:「相談員の高齢化」が問題になっている団体が多いです。キミノトナリは、20代・30代が多いのですが、仙台で虐待防止や女性支援の活動をされている団体では60代・70代の方々が中心になっているところが多いのです。そうすると、必然的に後継者不足という課題が浮き彫りになってきています。
TO:どうしたら、より多くの方々に、活動に携わってもらえると考えていますか?
東田さん:ボランティア自体が「癒しの作業になる」ことが、意外とよくあるんですよね。このことに気がついてもらうことが、大きな一歩になると思います。一歩勇気を持って踏み出し、人の為になる活動、誰かを思って自分が動いた行為を通して、相手に感謝されたり、喜んでもらえたりすることを若い世代に体感していただきたいです。ボランティア活動自体が、自分自身の癒しになることがあるよ、っていうことを、もう少し広く伝えていきたいな、みたいなことは考えていますね 。
TO:最後に、今後の目標を教えてください。
東田さん:SNSでの拡散などを通して、若い世代に届けたいという思いがすごくあります。仙台にお住まいでない皆さんには、是非「全国妊娠 SOS ネットワーク」のホームページを見ていただいて、自分のお近くの団体さんに興味を持っていただければ嬉しいですし、困った時に利用していただくと良いと思います。そして、是非取材などをしていただいて、周知やボランティア活動に協力していただけたら嬉しいです。
また、我々としては、これからも引き続き、寄せられた相談に対して、真剣に向き合ったり寄り添ったりする心を大切にしていきたいです。メンバーや協力者同士、お互いに、得意なことを活かし、不得意なところは補い合いながら、どんどん精力的に動いて行けたら良いなと思っております。
TO:この度は、取材をお引き受けくださり、ありがとうございました!
〜あとがき〜
コロナ禍で、若年妊娠に関する相談件数が増加するなど、予期しない妊娠に関する課題は尽きることがありません。性別に関わらず、我々若い世代が当事者の一人であるからこそ、他人事化せずに向き合っていくことが大切だと、今回の取材を通して改めて実感しました。
〈キミノトナリさんからのメッセージ〉
宮城県・東北地方を中心に、幅広い年代の方から妊娠にまつわる相談をお寄せいただいています。
宮城県内の方には、病院・役所等への同行や、居所探し等の直接支援も行っています。
単発の助成金・補助金以外、活動資金は会費とご寄付でまかなっておりますので、活動継続のために更なるあたたかいご支援をお待ちしております。
<キミノトナリさんの活動一覧>
キミノトナリHP:https://kimitona.net
キミノトナリFacebook:https://www.facebook.com/kiminotonarisendai/
キミノトナリのラジオ「キミトナラジオ」
毎週水曜 22:00∼22:30 エフエムたいはく にて
文:西野 麗華(津田塾大学総合政策学部2年)
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