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執筆者の写真Tsuda Outreach

認定NPO法人キッズドア様


 

全ての子どもが満足に学べる社会へ

学習支援において私たちが知るべき実態とは

 




日本には、貧困をはじめ、虐待、障がい、いじめなど、様々な問題に苦しんでいる子どもたちがたくさんいます。

認定NPO法人キッズドアは、こうした子どもたちが夢や希望を持つことができる社会の実現を目指し、無料学習会や居場所支援、政策提言活動などを行っている団体です。

今回は、学習会で教育支援を行なわれている大橋 早由里さんに、子どもをめぐる社会問題の実態についてお話を伺いました。


<大橋様プロフィール>


大橋 早百里(おおはし さゆり)様

津田塾大学国際関係学科を2020年に卒業。

大学時代から子どもの貧困に関心があり、開発経済について学びを深めるほか、1年間休学してフィリピンのNGOでインターンを経験した。現在は、以前働いていた塾講師の経験を生かし、キッズドアで子どもたちに学習支援を行なっている。







NPO法人キッズドアとは


Tsuda Outreach(以下TO):まず、キッズドアの活動について簡単にご紹介お願いします!

大橋さん私たちキッズドアは「全ての子どもが夢や希望を持てる社会」というビジョンのもと、子どもの学習・居場所支援を行うNPOです。キッズドアの学習会には、様々な事情を抱えた子どもたちが訪れます。

彼らが頑張るためには周囲の応援が不可欠ですが、彼らの保護者は生活を支えることに精一杯な場合が多いです。そのため、子どもたちが夢に向かって頑張れるよう私たちが一緒にサポートしています。


キッズドアには学習支援を行う部署や広報、啓発活動など様々な部署があります。私は現場で学習支援をする部署で活動しています。


学習会での支援事業について


TO:これまで支援を行われてきた中で、特に印象に残っているエピソードを教えてください。


大橋さん:ある不登校の高校生の男の子を担当した時の話です。

彼はとても明るい性格で、誰とでも仲良くなれるタイプの男の子でしたが、学校の授業は休みがちでした。そのため単位を取得できず、卒業が見込めなくなってしまい、退学せざるを得ない状況にいました。彼の担当になった私は、一緒にその後の進路を考えました。

高校中退後の進路は、別の高校に編入して高校卒業を目指すか、高卒認定試験を受けて専門学校に進学するかの2択となりました。彼は専門学校への入学を希望したため、教室では高卒認定試験の勉強を行いました。最終的には必要科目を全てクリアし、志望する専門学校に合格することが出来ました。彼とのやりとりを通して、私も将来の様々な選択肢を考えることができました。現在も彼は専門学生として学びながら、ボランティアとして学習会に戻ってきて、生徒たちのサポートをしてくれています。

TO:すごい成長ぶりですね!大橋さんのサポートが彼にとって大きな原動力になったと思います。子どもの精神状態のケアという点で苦労された経験はありますか?


大橋さん:母子関係の不和から精神的に不安定な状態に陥っている女の子がいました。初めのうちは大人を信頼することが出来ず、様々な試し行動を取ることがありましたが、時間をかけて関係性を築くうちに少しずつ心を開いてくれるようになりました。教室に通い始めてから1年が経つ頃にはスタッフをかなり信頼してくれるようになっただけではなく、自分の進路や自分自身を客観視できるようになりました。この経験を通して、子どもが受け入れられ、安心できる場所を作ることの重要性を実感しました。


TO:具体的に教えてくださりありがとうございます。そのような子どもたちの様子を見るために、個人的に面談することはありますか?


大橋さん:そのような場所を設けると構えてしまう子が多いので、あえて面談の場は設けずに、日常会話から子どもたちの精神状態を見ています

もし専門的な知識を持った職員が対処したほうが良い場合は、臨床心理士にバトンタッチして、様子をみてもらっています。一方で一対一で話を聞いて欲しいと言う子や、心理士さんとお話ししたいという子には、個別に話をする時間を設けています。


TO:子どもたちひとりひとりに寄り添えるよう、様々な対応の仕方を用意していらっしゃるのですね。学習会には何人ほどのスタッフさんがいらっしゃいますか?


大橋さん:事例を挙げた教室は、定員70名で常勤スタッフ3名でした。プラスで大学生のアルバイトさんも来てくれています。一見生徒数が多いように感じますが、一日当たりの来所数はそこまで多くないので、一人ひとりにしっかりと寄り添った支援を行っています

私の担当する学習会では、居場所支援として、学習時間以外も子どもたちを受け入れています。学校や家とは異なる第3の居場所として、みんなのんびり過ごしてくれます。


TO:コロナの時期はどのような支援を行っていましたか?


大橋さん:最初はオンライン学習に切り替えようとしたのですが、家にインターネット環境やパソコンがない、兄弟たちが騒いでいて集中できないなど、家庭に十分な学習環境がない子がたくさんいました。そのため、一人当たりの一日の上限を設け、密にならないよう配慮しながら、できる限り対面で行うようにしました。

TO:奨学金など、金銭面ではどのような支援を行っていますか?


大橋さん:生徒と一緒に使える奨学金を調べたり、申し込みのサポートをしています。ただ、使える奨学金の額には限りがあるので、アルバイトをしてお金を貯めてもらったり、状況に応じて比較的学費の安い通信制の大学を提案することもあります。中には一旦就職して貯金をしてから進学するかどうかを決める、というしっかりした生徒もいます。また申し込み条件や選考はありますが、キッズドアの姉妹団体である「キッズドア基金」が定期的に奨学金を給付してくれています。


子どもの貧困は親の貧困


TO:キッズドアで活動して、大きく価値観が変わったことはありますか?


大橋さん:子どもたちと関わりながら、人生には色々な選択肢が作れることに気づかされました。大学は高校卒業後すぐ行かないといけないわけではないし、働いてお金がたまってから進学してもいい。働いているうちにやりたいことが見つかったタイミングで大学や専門学校に行っても良い。真面目な人ほどこうあるべきだと思って、そこから外れるとしんどくなってしまう人が多いと思うので、もっと社会は柔軟になってもいいのではないかと思います。


TO:今日の日本の子どもの貧困問題について、どのように感じていますか。


大橋さん:日本のこども支援の課題に関して、理事長の渡辺は、「子どもの貧困は親の貧困だ」といいます。キッズドアに通っている子どもたちの保護者は決して働いてないわけではなく、低賃金が原因で生活が苦しい状況にいます。経済的に余裕がないと子どもの面倒を見る余裕もなくなるし、思い詰めた結果鬱になってしまったり、虐待に繋がったりもします。また、子どもも情緒が不安定になったり、ヤングケアラーになってしまったり……負の連鎖だと思いますね。

政府もクーポンなど一時的なものではなく、定期的に現金給付してあげたらいいのではと思います。現場で支援しているからこそ見えてくる問題をこれからも発信していきたいです。


TO:最後に、大学生にもできる活動があれば教えてください!


大橋さん:まずは関心を持ってもらうことが一番大事だと思います。

ただニュースや大学の授業で得た情報をただ聞き流すのではなく、自分ごととして捉えないと、行動に移すことは難しいと思います。

今日話したことは外国ではなく、全て日本で起きていることです。もしこのような子どもの貧困問題に興味を持っていただけたら、学生ボランティアにもぜひ参加して頂けると嬉しいです。

TO:ありがとうございます。 私も子どもの貧困問題の実態を少しでも広めていけるような活動がしたいです。


〜あとがき〜

この取材を通して、日本の子どもたちを取り巻く様々な教育問題・社会問題の現状に対する理解を深めることができました。大橋さんもおっしゃっていた通り、多くの子どもたちが自由に学ぶことができるような社会を実現するためには、私たちが現状を知り、どんな支援が必要かを考え、実際に行動に移していくことだと思います。

SNSなどが全世代に広まった今、支援の輪を広げることは以前よりも簡単になってきていると思います。私たち一人一人が、日々のニュースの情報をただ見たり聞いたりしただけで終わらせるのではなく、小さなことでもできることを見つけて積極的に行動におこしていけば、のちにそれが積み重なって支援の輪が広がり、より良い社会を実現させることができると思います。


 

認定NPO法人キッズドア様の活動一覧



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文:並木 優衣(津田塾大学総合政策学部)








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