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  • 執筆者の写真Tsuda Outreach

特定非営利活動法人PARCiC様 ー後編ー


 

フェアトレードが社会を変える

ー後編ー

「助けてあげる」ではない

関わる全ての人が互いに助け合う「相互共助」の精神

 


前回に引き続き、フェアトレードを通して民際協力を行うNGO、パルシックを紹介。


後編では、前編で紹介したフェアトレードの仕組み等を踏まえ、パルシックのシステムによりコーヒー生産者の収入や暮らしにどのような変化があるのか、そして今後の日本国内における社会構築についてロバーツさんに聞いた。


〈ロバーツ圭子さんプロフィール〉


ロバーツ圭子 パルシック専務理事

学生時代にバックパッカーで数か国を回る。イギリスで暮らしていた時、スーパーで見たフェアトレードやオーガニック商品の品揃えや価格が、日本とあまりに違うことに驚き、何とかしたいと考える。

2011年7月震災を機に転職し、パルシックに入職。以来フェアトレード担当として営業、販売管理、商品開発、輸出入を担う。1児の母、東京都小平市在住。



 

「コーヒー生産者の暮らしは良くなっているのか」


オレンジ色:農家の方の1日あたりの平均的な収入、青色:コーヒーの収穫量

コーヒーからの収入は収穫量に応じて変化する点から、コーヒー生産者にとって、まずは安定した収穫量が必要となる。しかし、上のグラフから読み取れるように、収穫量は安定せず、収入が増えたとは言えない。むしろ、物価の高騰により農家の生活はパルシックが活動を始めた当初と比較しても、苦しくなっている印象を持っているとロバーツさんは語る。


急激に収入が下がってしまった場合は、フェアトレード最低価格の保証によりフェアトレードの制度が効果的に働く。一方で、市場価格が上がっているときはフェアトレードの有効性がなくなってしまうため、2002年以降はフェアトレードが価格の上で貢献しているとは言えないのだ。(下表)


国際マーケットとフェアトレード価格。水色がフェアトレードの最低価格、青が一般的なニューヨーク市場の価格。


「農家がフェアトレードを求めるワケ」



金額面ではメリットが少ないように感じるフェアトレード。しかし、パルシックが一緒に活動する組合の数は年々増えており、現時点で活動している600世帯に加えて参加希望者に参加を待ってもらっているほどだ。収入も増えておらず、フェアトレード価格がそんなに彼らを守ってないのにもかかわらずなぜそこまで彼らは入会を望むのか


入会を望む大きな理由が、ソーシャルプレミアムと農家の不利益の回避だ。


まず、ソーシャルプレミアムとは農家個人ではなく組合に支払われる資金を示す。コーヒー1kgあたり22セントだ。私たちがコーヒーを1年間に買うコーヒーはおよそ70トンだとしても、相当な金額になることが見込まれる。

この資金は、組合だけでなく地域の経済的・社会的・環境的開発のために使われ、時には不便な村落に水道を建築するために、コーヒーが不作の地域に米を配給するために使われる。印象的だった使い方の1つには、地域の4人の若者を農業大学に行かせる大学費用に使ったケースもあり、これは人材育成、地域活性化にも繋がるのだ。


フェアトレードを求める2つ目の理由が、資金価値の相違による不利益回避だ。農家は非常に立場が弱く、多くの場合は、買い叩かれた際に競争ができない状況だ。


例えば、オックスファムの行った調査結果とパルシックのコーヒーを比較したのが以下の表だ。


インスタントコーヒーが1キロ26.4(USD)の小売価格で販売された場合、現地の農家が支払われるのは小売価格の約100分の1であり、農家の儲けが非常に少ないことがわかる。イギリスとウガンダの物価の違いなど、この調査結果だけを見て全てが分かるわけではないが、農家が暮らしていけるだけの価格は支払われているのか大きな疑問である。


一方、パルシックのコーヒーは200gのパッケージを700円で販売する場合、ブレイクダウンすると生産者に届く資金が76円、比率でいうと11%だ。パルシックと協同しフェアトレードすることで農家が販売分に対して妥当な儲けを得ることができている。


「日本国内のフェアトレードへの意識と貢献度」



ここまでで紹介してきたような、東ティモールの農家がパルシックと継続的に活動する理由には、パルシックの細やかなサポートにある。農家が収入を上げるための取り組みの考案や、コロナ禍前には年に1度、コーヒーの消費者に向けた東ティモールへのスタディツアーを実施していたパルシック。消費者から生産者が見えるだけでなく、生産者にも私たち消費者を見て知ってもらうことも意識しているという。


日本は、フェアトレードの売上が非常に少ない国の一つであるが、近年は増加傾向にある。そして、消費されたフェアトレード食品のうち、64%をコーヒーが占めているのだ。


一方、日本国内におけるフェアトレードの購入額の調査では、ずっと右肩上がりだった購入額が2020年に初めて下がったと言われている。その理由としては、消費税増税やフェアトレード以外のさまざまなラベルが出現してきていることが挙げられる。例えば、レインフォレスト・アライアンス(※)のコーヒーなどさまざまな競合ラベルの売上が上がっていることなどは、フェアトレード以外でも「いい商品を作ろう」「いい商品を買おう」という意識が高まっている証拠であるとロバーツさんは語る。

※森林や生態系の保護、農園の労働環境など、持続可能な農業のための包括的な基準を満たした農園に与えられる認証制度。



「今後の日本における社会構築」


昨今のエシカルへの意識向上により、フェアトレード市場も再び盛り上がりを見せている。

ミレニアル世代による働きかけによって、CSR・CSVやESG投資も社会で注目されている点からも、パルシックが今後企業連携や投資を検討する際は確認しておきたい重要事項になりつつある。


ここからも企業のエシカル消費等への関心の向上など新たなやり方で社会を変えていくことが期待できる。途上国であることを打ち出さずとも、一流商品としての適正価格での販売やスタイリッシュかつおしゃれで実用的な商品販売を実現できているのだ。


パルシックが目指す社会としてロバーツさんはこう語る。


「パルシックがフェアトレードにおいて大切にしていることは、商品の生産者や消費者だけではなく、運送会社や倉庫会社の人など関わる人全てと対等な関係、そして信頼関係を築いていくということです。「協力してあげる」「助けてあげる」といった一方的なものではなく、お互いに助け合い協力しあうことで社会を変えていきたいと思っています。みんなが変わっていけるように自分から変わっていくことが重要です」

その活動の一環として、2018年に葛飾区で子供食堂を始めた。東ティモールに4年ほど駐在していた日本人スタッフが帰国した際、東ティモールで学んだ誰か困ってたらお互いに助け合うという相互扶助の精神を元に始まったという。近年「発展途上国(developing country)」という考えはなくなりつつある。その理由は、国規模ではなく国内においても貧困等の格差が広がっている現状があるからだ。東ティモールでの学びを活かし互いに学び合う、これこそがパルシックが掲げる民際協力である。


〜NPO法人パルシックさんからメッセージ〜


こんにちは!Tsuda Outreachの皆さん、今回は取材に加えて、チャリティイベントでパルシックの商品をご販売もありがとうございました。フェアトレードの魅力の1つは、身近なモノを通して、多くの人が参加できるところだと思っているので皆さんの行動力がうれしかったです。パルシックはフェアトレードを含み、社会を変えていくための色々なアプローチをしています。現在は、「東ティモールの子どもたちに栄養たっぷりな給食を届けたい!」(2022年8月末まで)クラウドファンディングに挑戦中です。ぜひ、以下のリンクをご覧ください。https://readyfor.jp/projects/parcictimorleste


〜あとがき〜


途上国の人々にサポートをする、となった時、それは「支援」というケースが多いですが、そのような形でのサポートは短期的になることが多く、逆に自立を妨げることもあります。そのため、関わる全ての人が互いに助け合う仕組みづくりをするパルシックさんの活動に大変魅力を感じました。この記事を通して、「フェアトレード商品を買いたいけど高いから買わない」、「どう役立っているのか分からず買うまで行きつかない」という方にフェアトレードの仕組みを少しでも知っていただき、フェアトレード商品を買う選択をするきっかけになれば幸いです。


 

<パルシックさんの活動一覧>


【クラウドファンディング挑戦中】

東ティモールの子どもたちに栄養たっぷりな給食を届けたい!


パルシックHP:https://www.parcic.org


フェアトレードショップ『パルマルシェ』:https://parmarche.com/


パルシック Instagram:https://instagram.com/parcic_tokyo


パルシックTwitter:https://twitter.com/parcic_office


フェアトレード部Twitter:https://twitter.com/parcic_ft


パルシックFacebook:https://ja-jp.facebook.com/parcic



文:猪野 陽菜(津田塾大学総合政策学部3年)


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